2012年11月16日金曜日

為替デリバティブの巨額損失から破綻に至った技術系ベンチャー


チャイナプロジェクトの樋笠です。iphoneに部品が採用されて中国の製造拠点も展開したマザーズ上場のシコー株式会社。超小型モーターの開発企業として順風満帆だったハイテクベンチャー企業でしたが、2007年の為替デリバティブ取引の巨額損失によりつまずき始めました。

2008年12月期には23億円超の当期純損失を計上。今年8月、経営破綻となり民事再生申請となりました。支援の名乗りを上げたミネベアとも、債務不履行を理由にスポンサー契約を解除したことが11月14日に発表されました。以下、9月5日当時のJcastニュース記の事から引用します。
 
 

米アップルに見放されて破たん、上場廃止 携帯「マナーモード」生みの親のシコー

http://www.j-cast.com/2012/09/05145339.html?p=all
 
携帯電話のバイブレーター用の精密小型振動モーターを開発するなど携帯電話向けの受注で業績を伸ばしてきた「シコー」が、東京地裁に民事再生法の適用を申請して破たんした。負債は2012年7月末時点で約85億945万円。9月11日には、東証マザーズを上場廃止になる。
 
   小型振動モーターで実績を積んだ同社は、米アップルのスマートフォン「iPhone」に採用されたことで2010年12月期には過去最高の約140億円の売上高を計上したが、そのアップルに見放されて資金繰りが悪化した。
 
■アップルからの受注で10年12月期には過去最高の売上高
 
シコーは1974年6月に創業。携帯電話のバイブレーター用の精密小型振動モーターを開発した「マナーモード」の生みの親で、携帯電話向けの受注で業績を伸ばした。中国にも進出し、同社が開発と設計を担当。製品は中国の子会社が生産した。
 
   東証マザーズには、2004年8月に上場。翌年には携帯電話のカメラに搭載し、焦点を合わせるのに使う「AFLモーター」の低価格化に成功し、アップルなどスマホ大手に販売を伸ばした。
 
   躓きは、2007年に手を出した「為替デリバティブ」にある。リーマン・ショック以降の急激な円高進行で評価損を抱えるようになり、断続的な赤字決算の要因となっていた。
 
   アップルからの受注で10年12月期には過去最高の約138億円の売上高を計上したものの、同社はその後もアップルからの大量受注に備えて中国・上海工場で労働者を大量に確保していた。
 
   ところが、11年9月にアップルが「iPhone4」をモデルチェンジした際に、同社は受注を打ち切られてしまう。上海工場は大規模なリストラを余儀なくされ、その結果、11年12月期の売上高は104億5700万円にダウン、最終損益は31億6900万円の赤字に転落した。
 
   最近では量産技術や価格競争で、中国や韓国勢に激しく追い上げられていたこともある。
 
   創業者でもあるシコーの白木学社長は、いわゆる「技術屋」で開発一筋の人。とはいえ、為替デリバティブに上海工場の人件費の上昇と、いずれも経営陣が先行きを読み間違えたことに変わりはない。

 
■アップル株は高値で推移
 
   シコーのスポンサーに名乗りをあげたのは、極小ベアリング製造のミネベア。ミネベアは2012年5月に、韓国の小型精密モーターのモアテックを買収。シコーはそれに続くもの。

   ミネベアはシコーから「AFLモーター」の製造を譲り受け、主力のモーター事業を拡大。シコーの国内の従業員約60人も引き継ぐほか、生産拠点の中国工場での製造はミネベアの関連会社の工場に移管する見通しだ。

 

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